11月4日-5日に東京で開催された神経理学療法学会の伝達講習を、12月12日 (火)、15日(金)に開催しました。
神経理学療法学会とは、脳卒中や脊髄損 傷、神経筋疾患などの神経障害に基づく課題について、理学療法の視点に立った 基礎研究や臨床研究を推進し、根拠に基づく理学療法の普及や教育の向上を図る ことを目的として活動しています。
今回の学会は、今後の神経領域の理学療法に おける課題や、その課題解決に向けた研究の方向性などを考えていくものでし た。 1日目の伝達講習は実技講習として、脳卒中者の体幹機能を高める為の、麻痺側へ の寝返り練習と、歩行介助のポイントを伝達しました。
麻痺側への寝返りでは、麻痺側の肩を下にして寝返りを行なっていく為、肩関節 の保護が重要となってきます。体幹の機能が働かずに、肩を敷きこむように寝返 りをしてしまうと痛みを起こしますが、体幹の機能が働いて、肩の上に身体が乗 らないように姿勢をとっていくことで痛みを起こさずに横になる事ができ、その 姿勢で様々な訓練を行う事ができます。
歩行介助のポイントでは、①麻痺側の足に体重が乗ること、②体重の乗った足が後 ろに引き伸ばされる(股間節伸展する)こと、③ある程度の速さで歩くこと、④な るべく平行棒や杖を持たずに歩くことなどを意識して、臨むことをお伝えしまし た。文章で書けば簡単なように思えますが、半身の麻痺した対象者の方の歩行を介 助するのは理学療法士であっても簡単なことではありません。私もそうでしたが、 新人セラピストであれば誰もが歩行介助に苦慮する道を通ってきます。そんな時に、ま ずはしっかり自分(セラピスト)の為に鏡を前や横に置いて対象者の歩行姿勢を確か め、目の前で起こっている現象と向き合いながら修正を加えていく事が重要と思い ます。
脳卒中の歩行再建のアプローチについては、ある程度上述したような方法がスタン ダードとなってきています。病院全体で歩行再建のアプローチの標準化を図ってい けたらと考え、2日目の伝達講習ではグループワーク形式で歩行再建に向けた、ビ ジョンと行動目標を検討しました。 歩行再建に向けたビジョンとは、対象者の方がどのように歩きたいと思っているの か、またどのような歩行を目指すべきなのかという事を対象者目線で捉える事と し、各グループからは、「安全に自分一人で歩きたい」や「きれいに(かっこよ く)歩きたい」というものが上がりました。
次に行動目標とは、ビジョンを達成する為にセラピストが取るべき行動を具体的な 行動レベルで設定しようというもので、「早期の装具必要性を検討し、早期歩行訓 練を行う」ことや、「基本動作練習を積極的に行っていく事」「まずはラポールの 形成や精神面での向上を図っていく」などが出され、積極的な議論となったと思い ます。 学会参加に当たり、フォロー・支援して頂いた職場の皆様に感謝申し上げます。ま た、当日参加いただき、活発な議論に参加いただいた皆様も、ありがとうございま した。
今回だけでは院内で統一したビジョンと行動目標と言う所まで落としこめな かったのが課題ですが、継続して今回の様なグループワーク・実技講習を取り入れ ながら、スタッフの知識・技術の向上、認識の共有を図っていきたいと考えていま す。
(リハビリテーション部 理学療法士 岡林)
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